ランニングで筋肉は落ちるのか|原因と落とさないための判断基準
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ランニングで筋肉が落ちるとは限りません。骨格筋が減りやすいのは、走ること自体より、摂取エネルギー不足、筋力刺激の不足、回復不足が重なったときです。体重や見た目の短期変化だけで筋肉減少と決めず、筋力、疲労、食事、走行負荷を一緒に確認する必要があります。
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はじめに
走った時間だけで安全・危険は決まりません。減量全体の組み立ては、親記事のランニングダイエット・健康効果ガイドも参照してください。
骨格筋はランニングだけで落ちるのか
骨格筋に対するランニングの影響は、必ず「減少」になるわけではありません。有酸素運動は持久系の刺激を与えますが、筋肉量の変化は運動量、食事、筋力刺激、休養を含む全体設計で変わります。運動刺激に身体が応じる運動適応も、持久力と筋力で同じではありません。
この点を確かめる材料が、2021年にSports Medicineで発表されたメタ分析です。分析対象は43研究、計1090人で、590人が有酸素運動と筋力トレーニングの併用、500人が筋力トレーニングのみを行いました。有酸素運動の内訳にはサイクリング24研究、ランニング16研究が含まれています。
筋肥大の標準化平均差は−0.01、95%信頼区間は−0.16〜0.18、p=0.919でした。Sports Medicine掲載のメタ分析は「有酸素運動と筋力トレーニングの併用は、筋肥大と最大筋力の発達を損なわない」と結論づけています(原文英語)。「走れば筋肉が削られる」という一律の説明より、どの刺激をどの条件で組み合わせたかを見るほうが正確です。
ただし、無制限に走ってよいという意味ではありません。筋トレを残した研究条件を、摂取・睡眠不足や急な走行量増加が重なる人へそのまま当てはめないでください。
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落ちたように見える変化と本当の筋量低下
骨格筋が本当に減ったかは、体重計の一回の数値だけでは判断できません。筋肉に蓄えられるグリコーゲンは糖の貯蔵形態であり、炭水化物摂取や運動量が変わると、筋肉の張りや体重の見え方も変わります。発汗後の水分状態も、短期間の数値を動かします。
| 見る項目 | 一時的な変化の可能性 | 骨格筋低下を疑って見直す材料 |
|---|---|---|
| 体重 | 走った直後だけ下がる | 複数週にわたり下がり続ける |
| 見た目 | 炭水化物を減らした直後に張りが弱い | 同じ条件の写真でも細さが続く |
| 筋力 | 疲労が強い日に一時的に落ちる | 同じ種目・負荷で低下が続く |
| 走り | 強い練習の翌日だけ脚が重い | 易しいペースでも回復しない |
| 食事 | 一食だけ少ない | 運動量に対して不足が続く |
体重と安静時代謝量は単純に同率で下がりません。同じ測定条件の推移に加え、同じ筋トレ種目の負荷、通常ペース、疲労の抜け方を確認します。
グリコーゲンや水分の変化だけなら、必要なランニングまで止める理由にはなりません。反対に筋力低下と疲労が続くなら、体重減を順調と決めず、複数の指標を見直します。
骨格筋が減りやすくなる三つの条件
骨格筋が減りやすい条件は、摂取不足、過大なトレーニング負荷、筋力刺激の欠如です。走行時間だけではなく、トレーニング頻度と運動強度を含む総負荷で考えます。使ったエネルギーを食事と回復で埋められているか、以前の筋力トレーニングを維持できているかも確認します。
摂取エネルギーが運動量に追いつかない
エネルギー消費量を増やしながら、食事量まで急に減らすと、身体機能に使えるエネルギーが不足しやすくなります。問題のある低エネルギー利用可能性に関連する健康・パフォーマンス障害は、スポーツにおける相対的エネルギー不足(RED-S)として整理されています。これは単なる空腹感ではなく、食べない状態や過大な運動が慢性化したときに考える概念です。
米国スポーツ医学会(ACSM)が紹介した競歩選手の事例では、選手は15日間にわたり約19km/日のトレーニングを行い、一部の選手は後半9日間に約1,500kcal/日の厳しいエネルギー制限を受けました。摂取カロリーは約41%減り、体重は約2kg減りました。高タンパク摂取によって筋量は概ね維持された一方、ストレスと疲労は増え、練習の質は低下しました。体重変化とレース成績変化にも相関はありませんでした。
高タンパクでも疲労や練習品質が悪化すれば成功とは言えません。減量は体重だけでなく、燃料と回復も評価します。
走行負荷を急に増やす
ロングランは持久力づくりに必要な練習ですが、距離、頻度、強度を同時に増やすと回復の余地が減ります。特に、食事を減らす時期と走行量を増やす時期を重ねると、どちらが疲労の原因か見分けにくくなります。まず走行時間か頻度の一方だけを変え、同じランニングペースでの感覚や安静時心拍数の推移も確認すると、負荷の変化を追いやすくなります。
空腹時ランニングも、それだけで筋肉減少を決めるものではありません。しかし、長い走行、炭水化物不足、前日の食事不足が重なるなら、燃料不足の可能性を先に見直すべきです。減量目的の走り方は、ランニングダイエットの正しい方法とランニングの消費カロリーを合わせて確認すると、食事と運動の調整を分けて考えられます。
筋力刺激をなくす
ランニングは脚を使いますが、全身への筋力刺激ではありません。従来の筋トレを止めれば、上半身を含む維持刺激も減ります。
筋力刺激は、継続できる基本動作から選びます。
| 主に確認する部位 | 基本動作の例 | ランニングとの関係 |
|---|---|---|
| 大腿四頭筋 | スクワット | 膝の曲げ伸ばしを支える |
| ハムストリングス | 片脚デッドリフト | 股関節の伸展と片脚支持を扱う |
| 臀筋群 | ランジ | 推進と骨盤周辺の安定を支える |
| ふくらはぎ | カーフレイズ | 足首の底屈動作へ刺激を残す |
| 体幹トレーニング | プランク | 走行中の姿勢保持を補う |
固定の時間線は設けません。SERPに「30〜45分以内」「1時間を超えると注意」という目安はありますが、本記事の資料は総負荷、利用可能エネルギー、筋力刺激、回復を条件にしています。
有酸素運動と筋力トレーニングは両立できる
コンカレントトレーニングは、有酸素運動と筋力トレーニングを同じトレーニング周期に並行する方法です。両方を行うこと自体が問題なのではなく、量、強度、順番、セッション間隔によって適応が変わります。
前述の43研究の統合では、筋肥大と最大筋力は筋トレ単独と比べて損なわれませんでした。一方、爆発的筋力、つまり短時間で大きな力を立ち上げる能力の伸びは、同一セッションで両方を行ったときに弱まりやすく、3時間以上分けた条件ではその差が有意ではありませんでした。筋肉量の維持と、瞬発的な能力の最大化は別の論点です。
日本語の実務資料では、NSCAジャパンが「CTのセッション間では4~8時間の回復時間を確保することが重要となります」と説明しています。同資料は、高強度トレーニング後の神経筋機能と筋力の低下が最長24時間後まで確認される点にも触れています。また、ランニングを一日の最初に置く配置を、ランニングエコノミーの適応を得るための現実的な考え方として挙げています。
三時間と四〜八時間の数字を競わせる必要はありません。研究の「三時間以上」は比較条件、NSCAの「四〜八時間」は実務上の提案です。市民ランナーは、同じセッションで脚の高負荷筋トレと質の高いランを詰め込まないことを第一にします。間隔を取れなければ別日に分け、優先する練習を疲れていない状態で行います。
走行距離と筋トレ量を同じ週に増やさず、重要なランの翌日に重い脚トレを置かないなど、回復できる組み合わせにします。
炭水化物とタンパク質で回復を支える
炭水化物は走るための燃料、タンパク質は筋肉を構成する材料として捉えます。どちらか一方だけを増やすのではなく、スポーツ栄養として食事全体を整え、栄養摂取タイミングまで含めて考えることが、骨格筋の維持と次の練習の質を支えます。
大塚製薬の炭水化物解説は「筋肉量を維持するためにも炭水化物は大切」と明記しています。同ページが引用する「日本人の食事摂取基準2020年版」では、炭水化物のエネルギー比率は全年齢で50~65%が目標です。また、持久系スポーツの疲労対策として、運動一時間あたり30〜60gの糖質摂取を紹介しています。
後者は長時間の持久運動を想定した数字であり、短いジョギングのたびに補給食が必要という意味ではありません。日常のランでは、まず主食を極端に抜いていないかを確認します。レース前に糖を蓄えるカーボローディングも、普段の短い走行に常時必要な方法ではありません。長時間走では、糖質を含む軽食、スポーツドリンク (Rakuten / Amazon / Yahoo!)、エナジージェル (Rakuten / Amazon / Yahoo!)などから、運動時間と胃腸の状態に合う補給を選びます。炭水化物不足が続くと、体内のタンパク質や体脂肪がエネルギー源に回り、筋肉減少につながる可能性があるためです。
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筋タンパク質合成(MPS)は、アミノ酸から筋肉内のタンパク質を作る過程です。筋肉の材料をそろえるには、食事から必須アミノ酸を含むタンパク質を摂る視点も欠かせません。森永製菓の解説は、一日に必要なタンパク質を三食、または補食を含む四〜五回へ分ける方法を紹介しています。トレーニング後45分以内の補食では糖質とタンパク質を鍵に挙げ、回復過程は二〜三日続くと説明しています。
この「45分」を、過ぎたらすべて無駄になる魔法の締切として扱う必要はありません。記事の実用的なポイントは、運動後に食事を抜かず、その日だけでなく翌日以降も必要な栄養を継続することです。分岐鎖アミノ酸(BCAA)やアミノ酸サプリメントは不足を補う選択肢ですが、通常の食事で炭水化物、タンパク質、野菜、果物をそろえられるなら必須ではありません。
炭水化物だけを大きく減らしたり、走行量を理由に食事を無制限に増やしたりせず、食事管理と練習を記録して一項目ずつ調整します。
筋肉を守るための判断基準
トレーニング回復は見た目より、筋力、通常ペース、疲労、食事不足が続くかで見ます。ランニングリカバリーには睡眠による回復と食事も含まれ、ランニングダイエットでは体重減だけを成功指標にしません。
flowchart TD
A["体重や見た目が変化"] --> B{"筋力低下や強い疲労が続くか"}
B -->|"いいえ"| C["同じ条件で推移を記録"]
B -->|"はい"| D{"食事量と走行量を同時に変えたか"}
D -->|"はい"| E["食事と走行負荷を一項目ずつ戻す"]
D -->|"いいえ"| F{"筋力刺激と回復時間が残っているか"}
F -->|"いいえ"| G["筋トレを残しセッションを分ける"]
F -->|"はい"| H["疲労が続くなら専門家へ相談"]
体重だけで筋肉減少と決めず、筋力・疲労・食事・配置の順に確認します。
覚えることは三つです。
- 体重だけで決めません。 同じ測定条件の推移、筋力記録、疲労、通常ペースを一緒に見ます。
- 走行量と食事量を同時に削りません。 まずダイエット目的のランニング頻度を安定させ、炭水化物とタンパク質を含む食事を確保します。
- 筋力刺激と回復を残します。 同日に行う場合は同一セッションへ詰め込まず、可能な範囲で間隔を取ります。
ウォーキングでも消費エネルギーを積み上げられます。疲労が強く、走行負荷を下げたい日は、スロージョギングも含めて強度を選びます。ランニングとウォーキングの比較を参考に、目的を保ったまま運動の負荷を調整してください。
食事と負荷を見直しても筋力低下、強い疲労、体調不良が続く場合は、休息日を確保し、医師や管理栄養士へ相談します。RED-Sは記事で診断できないため、エネルギー不足と回復不全の評価を優先します。
関連記事
出典
- NSCAジャパン「コンカレントトレーニングの紹介」 — 2024-05-07 — 持久系と筋力トレーニングの干渉作用、配置、回復時間を確認
- 大塚製薬「炭水化物」 — 2020-01-01 — 炭水化物の働き、摂取比率、持久運動中の糖質補給を確認
- 森永製菓「タンパク質と筋肉の関係性」 — 2026-06-15 — タンパク質摂取の分け方、運動後の補食、回復期間を確認
- Compatibility of Concurrent Aerobic and Strength Training for Skeletal Muscle Size and Function — 2021-11-10 — 43研究のメタ分析と筋肥大・最大筋力・爆発的筋力の結果を確認 —
[en] - ACSM「Optimal Race Weight for Endurance Sports: A Complex Issue」 — 2023-08-08 — 厳しいエネルギー制限、体重・筋量・疲労・競技成績の事例を確認 —
[en]
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