LSD トレーニングの効果|ペース・時間・向く人を根拠から解説
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LSD トレーニングは、会話できる低強度で長く動き、有酸素性の持久力を育てる練習です。距離ではなく時間を管理し、速度や最大酸素摂取量を狙う高強度練習とは役割を分けます。
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目次
- はじめに
- LSDトレーニングとは
- LSDトレーニングで期待できる効果
- LSDトレーニングのペースを決める
- LSDトレーニングの時間と頻度
- ジョギング・ロングラン・高強度練習との違い
- LSDトレーニングの効果が出にくい失敗
- LSDトレーニングが向く人・向かない人
- 次の1回を決める3つの判断
はじめに
LSDトレーニングの誤解は、「遅いほど安全で効果的」と考えることです。低強度でも長時間なら総負荷は増え、速度を上げれば低強度を保つ狙いから外れます。
日本語の実践資料では、7〜8分/km、普段のジョグより1km当たり1〜2分遅く、会話や鼻呼吸など基準に幅がありますが、距離より時間を優先する点は共通します。本稿では、適応と限界を分けて次の練習を決めます。
LSDトレーニングとは
LSDトレーニングとは、低い強度を保ったまま長時間動き続ける有酸素運動です。LSDはLong Slow Distanceの頭文字で、Longは長く、Slowはゆっくり、Distanceは距離を表します。ただし、実践では距離の達成を急がず、運動を継続できた時間を管理します。
ランニングの中でも、LSDは速さの再現より低強度の継続を優先します。マラソントレーニングでは、マラソンの長い競技時間へ慣れるための土台として配置できます。ランニングペースは強度確認に使いますが、達成目標は走行時間で管理します。
距離を先に決めると後半のペースが上がりやすいため、Runtripのコーチも「距離ではなく時間を目安にすることがおすすめです」としています。週全体の設計は、親記事のランニングペースを目的別に分ける方法も参照してください。
LSDトレーニングで期待できる効果
LSDトレーニングでまず期待するのは、長時間の運動で酸素を運び、活動筋で利用し続ける能力への刺激です。米国国立生物工学情報センターで公開されている持久系トレーニングのレビューは、心拍出量、最大酸素摂取量、ミトコンドリア新生などの適応を整理しています。
同レビューの表現を日本語にすると、「古典的な持久系トレーニングは、心拍出量、最大酸素摂取量、ミトコンドリア新生を高めることで知られています」となります(原文英語)。ミトコンドリア新生は、エネルギー産生に関わるミトコンドリアの量や機能に関係する適応過程です。さらに、骨格筋でミトコンドリア新生と毛細血管密度が高まることは、酸素の運搬と利用を助け、長時間の有酸素運動で筋疲労が始まる時点を遅らせる方向に働きます。
脂質利用もLSDの代表的な狙いです。最大脂肪酸化とは、運動中の脂質酸化量が最も高くなる強度付近を指します。低強度なら常に脂肪だけを使うわけではありませんが、息が弾まない強度で長く動く練習は、強い運動より脂質利用の比重を保ちやすくなります。Runtripのコーチは、LSDの効果を心肺機能、持久力、脂肪燃焼効率、怪我のリスク軽減、精神面、効率的なフォームの6項目に整理しています。この効率は、一定速度に必要な酸素やエネルギー量で捉えるランニングエコノミーとも関係しますが、低速走だけで改善幅を約束できる指標ではありません。
長時間動く経験は、短い走行では出にくい足裏の違和感、給水、集中の波を低強度で確認し、補給やコースの課題を見つける機会になります。ただし、レース後半の速度を直接再現する練習ではありません。
ただし、ここで効果を万能視してはいけません。4週間のトレーニング比較では、最大ミトコンドリア呼吸が25%増えたのはSIT群だけで、LSD群とHIIT群には変化が見られませんでした。別の8週間・週3回の比較では、50 %VO2maxで55分、75 %VO2maxで35分、105 %VO2maxで2分反復を行った各群の間で、VO2maxと乳酸性閾値パワーの増加量に差がありませんでした。低強度、時間、研究対象、測定項目によって結果は変わるため、「LSDだけが最も優れる」とは断定できません。
LSDトレーニングのペースを決める
LSDトレーニングの運動強度は、時計の分/kmだけでなく、会話、心拍、主観的な余裕を重ねて決めます。同じ速度でも、坂、暑さ、睡眠不足、疲労によって体への負担が変わるためです。
最も簡単なのはトークテストです。これは、運動中に文章を落ち着いて話せるかで呼吸負担を判定する方法です。Runtrip Magazineのコーチが示す「会話ができるペースで走る」を第一基準にし、一人なら鼻呼吸を続けられるかも確認します。単語しか話せない、息継ぎが増える、呼吸を整えるために黙り込む状態なら、LSDとしては速すぎます。
数値で補助する場合は、心拍数ゾーンを使います。実践資料の一例は最大心拍数の60〜70%程度を示しています。最大心拍数は個人差があり、年齢式の推定値や手首センサーにも誤差があるため、この割合だけで合否を決めません。自覚的運動強度と呼吸が楽なのに一時的な心拍だけが高い場合は、測定状態も確認します。
ランニングの呼吸リズムが乱れた時点は、時計より早く強度超過を知らせることがあります。心拍予備量や安静時心拍数を使う設定は個人差を反映しやすい一方、計算値を会話テストより優先しません。アクティビティ記録で経過を残し、GPSトラッキングの速度は坂や受信状態も踏まえて読みます。
絶対ペースの目安として7〜8分/kmを挙げる資料もありますが、初心者にとってはそれでも速い場合があります。反対に、走力の高い人には遅すぎて動作が不自然になることがあります。ニコニコペースのように笑顔と会話を保てる感覚を優先し、必要なら歩きを挟んでください。
flowchart TD
A["走り始め:文章で会話できる"] --> B{"心拍と呼吸に余裕がある"}
B -->|はい| C{"フォームを保てる"}
B -->|いいえ| D["速度を落とす"]
C -->|はい| E["同じ強度を維持する"]
C -->|いいえ| F["歩きを挟んで立て直す"]
D --> G["数分後に再判定する"]
F --> G
G --> B
LSDトレーニングは分/kmを固定せず、会話・呼吸・フォームの順に再判定します。
LSDトレーニングの時間と頻度
LSDトレーニングのトレーニング負荷は、低い強度だけでなく継続時間と頻度でも決まります。ゆっくりだから毎回長くしてよいわけではなく、現在の最長走行時間から段階的に延ばします。
開始時間には資料間で幅があります。RUNNALは、一般的なLSDを90〜180分、初心者は60分程度、30分も続けて走った経験がない人は30分程度からとしています。Runtripのコーチは理想を90〜120分、走り始めた人は60分程度と説明しています。つまり「ロング」は固定値ではなく、普段15分しか走らない人と普段60分走る人では異なります。
初回は30〜60分で会話とフォームを保てる時間を選び、翌日に痛みや強いだるさが残れば延長しません。
頻度は週1回または隔週1回が目安です。RUNNEWは、LSDの距離を週間走行距離の3分の1程度までに抑える案を示しています。オーバーユース障害を避けるため、当日の余裕と翌日の痛みを記録します。中級者が距離走などを加える場合は月2回程度になることもあります。トレーニング頻度は固定せず、ランニング日誌 (Rakuten / Amazon / Yahoo!)で調整します。遅発性筋肉痛が強まれば時間を戻し、休息日と睡眠による回復を確保します。
長時間走る日は水分補給 (Rakuten / Amazon / Yahoo!)の場所と短縮路を先に決めます。90分以上では冬場でも水分が失われるという注意があるため、給水できない一本道は避けます。発汗が続く環境では電解質 (Rakuten / Amazon / Yahoo!)やナトリウムの補給が必要になる場面もあります。体調が悪化したら熱中症を疑って中止します。長時間走では炭水化物とグリコーゲンの関係もあるため、スポーツ栄養の目的を決めて補給を試します。
ジョギング・ロングラン・高強度練習との違い
ジョギングは、健康、回復、準備運動など幅広い目的で行われ、時間も必ずしも長くありません。一方、ロングランは、その人の通常の練習より長い時間または距離を走る広い概念です。LSDはロングランの一つになり得ますが、すべてのロングランがLSDではありません。
終盤を速めるロングランやレースペースを含む距離走は、LSDより強度の目的が明確に高くなります。スロージョギングは低速で走る運動を広く表しますが、LSDのように普段より長い継続時間を必須条件にはしません。呼吸やフォームを保てないときはウォーキングへ切り替え、ラン・ウォーク法として走行と歩行を計画的に組み合わせる選択もあります。LSDは「低強度を長く保つ」という狙いがある点で区別できます。一方、閾値走は乳酸性閾値付近を持続し、インターバルトレーニングは速い区間と回復区間を反復します。どちらもLSDより短く強い刺激を担います。
| 練習 | 主な目的 | 強度の見方 | 時間・構成 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| LSD | 有酸素の土台と長時間への慣れ | 会話できる低強度 | 初心者30〜60分から段階的に延長 | 距離を急いで速くしない |
| ジョギング | 健康、回復、日常的な走行 | 楽に継続できる範囲 | 短時間から自由に設定 | 目的を曖昧にしない |
| ロングラン | レース時間・距離への準備 | 内容により低〜中強度 | 週内で長い走行 | 週の総量を急増させない |
| 閾値走 | 乳酸性閾値付近の持続能力 | 会話が難しい一定強度 | 持続走または分割走 | 回復日を確保する |
| インターバル走 | 速度・高い酸素需要への刺激 | 短い高強度と回復 | 反復形式 | 本数より動作の質を優先する |
LSDを増やすほど速くなるわけではありません。速度やVO2maxを高める練習が必要なら、VO2maxを高めるトレーニングを別日に検討します。反復の組み方はインターバル走のやり方、持続的な強度の作り方は閾値走・テンポ走の実践で確認できます。
LSDトレーニングの効果が出にくい失敗
ランニングフォームが崩れたまま時間だけを延ばすと、LSDトレーニングの目的から外れます。遅くするために歩幅とケイデンスを極端に落とし、腰が沈む、フットストライクが前へ流れる、肩が固まる状態なら、自然に動ける速度へ少し戻すか歩きを挟みます。ピッチの見直しはランニングピッチを改善する方法も参考になります。
- 速すぎる — 楽に感じると普段のジョグへ戻り、会話が途切れます。数値より心拍数と呼吸の変化を優先してください。
- 距離を先に固定する — 早く終えるために速度が上がります。時間を目標にし、距離は結果として記録します。
- 初回から長すぎる — 30分の習慣から90分へ急に延ばすと、低強度でも総負荷が増えます。翌日の反応を見て延長します。
- 補給経路がない — 長時間になってから水分や帰路を考えると、安全のための中断判断が遅れます。
- LSDだけを繰り返す — 有酸素の土台は作れても、目標レースの速度に必要な刺激が不足します。
ランニングルート設計では、信号の多さ、給水地点、途中離脱のしやすさを先に確認します。硬さや傾斜が変わるランニング路面では同じペースを固定せず、交通や暑さを含むランナーの安全対策を優先します。
LSDトレーニングが向く人・向かない人
トレーニング回復を確保しながら長く動く時間を増やしたい人には、LSDトレーニングを取り入れる余地があります。初フルマラソンに向けて60分以上の連続運動に慣れたい人、速い日ばかりになっている人、会話できる低強度を学びたい人に向きます。
一方、走行中に痛みがある人、翌日まで歩行に影響する疲労が残る人、すでに週の負荷を増やしている人には向きません。ランニング障害の兆候があるときは、LSDの速度を落として続行するのではなく中止し、回復を優先します。低強度は痛みを無視してよい許可ではありません。
短期間で5kmの速度だけを上げたい人にも、LSD単独は不向きです。LSDは速い練習の土台に置き、目標速度の練習は別に残します。
睡眠を削ってLSDを行うのは本末転倒です。30〜60分を安定して繰り返せるなら、無理に90分へ届かせず、生活に収まる範囲で続けます。ランニング継続は最長時間ではなく、次の週へつなげられる設計で支えます。
次の1回を決める3つの判断
次回は、①会話とフォームに余裕のある強度、②初心者なら30〜60分から段階的に延ばす時間、③LSDと高強度日を分ける組み合わせ、の3点で決めます。最大心拍数の60〜70%や週間走行距離の3分の1は補助的な目安とし、翌日に痛みや強い疲労が残れば延長しません。
成功は距離ではなく、狙った低強度を最後まで保って次の練習へ回復できたかで判断します。
関連記事
出典
- RUNNAL:LSDトレーニングの効果と正しい走行時間・ペース — 2017-05-08 — 時間、ペース、初心者の段階設定を確認
- 皇居ランスタイル:ランニングのLSDとは — 2017-12-05 — 筋持久力と長時間走の考え方を確認
- Runtrip Magazine:LSDの効果と走り方 — 2025-05-02 — 会話・鼻呼吸、90〜120分、6つの効果を確認
- RADOST Running Club:LSDの効果と正しいやり方 — 2026-03-23 — 心拍数、頻度、水分補給の実践基準を確認
- RUNNEW:LSDの効果と走り方 — 2026-05-13 — 週間走行距離と頻度の目安を確認
- Adaptations to Endurance and Strength Training — 2018-01-01 — 持久系トレーニングの生理学的適応と4週間比較を確認 —
[en] - Intervals, Thresholds, and Long Slow Distance — 2009 — 8週間の強度・時間比較と持久系トレーニングの役割を確認 —
[en]
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